数年前の話になりますが、実弟が行方不明になりました。一時はバブル時期には非常に裕福な生活を送っていたのですが、バブルがはじけた後は少しずつ生活に余裕が見えなくなっていくのは感じていたのですが、いい大人が親をあてにする事はないだろうと思っていたのが大きな間違いで、年金暮らしの母へ携帯電話からお金の無心を頻繁に行っていたようです。

 

私には家族があり、母のと2世帯住宅で暮らしています。父は亡くなっています。弟は最終的に職も失い、2LDKのマンションの家賃が払えず、1Kのアパートに引越したばかりの時に、弟の友人から母に電話が入りました。数日前から連絡も取れないし、かなり落ち込んでいたようなので、ご実家へもどっていませんか?との問い合わせでした。何歳になっても可愛い一人息子の存在が行方不明と聞いた途端に、母の顔はひきつり、神奈川県の郊外に住んでいる私たちは即座へ弟の住んでいる23区のアパートへ、夜の8時位に向かいました。友人と待ち合わせしてとりあえず興信所へ家出人捜索を依頼しに行きました。

 

興信所の方は非常に丁寧にいつ頃から?性格は?借金などはありましたか?など母に様々な事を聞いていましたが、離れて暮らしている母には全ては答えきれずに、一緒についてきてくれた弟の友人が代わりに答えていた状況でした。

 

事前に警察にも届け出を出していて写真を提出し、印鑑を押して書類は出しましたが、未成年の家出でもありませんので、一般家出人は捜索する形にはならず、届出がでている場合は何かのきっかけで免許証などで照合できる場合があるだけで、すぐにどこにいるかなどはわかりません。母が一番心配していたのは、自殺でしたので、その場合などは身元がすぐにわかるという事なのでしょうが、私は心配よりも「いい歳していつまで親に心配かけるんだか」と思いつつも警察に提出する書類を母の代わりに代筆しました。

 

興信所の方は数多くの方の届出を受理していますが「見つかりましたら、必ず連絡を下さい」と念を入れられました。見つかっても連絡を入れない方が多くて、ご本人にも迷惑がかかりますのでと言われ、ほどなくして1週間程で弟の携帯に連絡が取れ、説得の末に戻ってきました。私は控えていた興信所の電話番号に電話を入れ、色々とありがとうございました。見つかりましたと報告して、一件落着ですが、本当に人騒がせな失踪事件でした。